みらいマルシェが今後もスモールチームにこだわる理由 〜 AI、少子化、Well-beingの時代をどう生きるか

創業から5周年を迎え、クラウド上に生鮮品の卸売市場を展開する「みらいマルシェ」は年間20億円の取引を扱うプラットフォーム事業へと育ってきました。市場規模に対してまだまだ小さく、改善すべきことも山ほどありますが、未来の生鮮品流通にとって欠かせないインフラになることを確信しつつあります。

一方、組織の面では、創業から1人も社員採用を行わず、創業者2名のみという体制で開発・運用やカスタマーサポートを行ってきました。当然社内はいつも人手不足で、そのためにお客様にご不便をおかけし続けていることも少なくありません。それでも、お客様や産業全体のことを長期的に考えた結果、ここまで意図的に組織拡大を避け、スモールチーム経営を貫いてきました。

この投稿では、みらいマルシェがなぜスモールチームにこだわってきたか、またこれから組織拡大とどう向き合いコントロールしていくかを整理してみようと思います。

組織拡大しないことを貫いてきた5年間

みらいマルシェは創業から5年間、プロダクト開発は私が、カスタマーサポートやセールスは一緒に創業した土屋が中心となって行い、社員採用をせず最小構成のチームで運営を続けてきました。これは私たちの目指す事業運営のあり方を一貫したものにするため、創業初期から意図したものでした。

ビジネスの都合で顧客を裏切らない

実は、「市場のクラウド版」という発想はみらいマルシェが初めてというわけではなく、過去にもいくつかの会社が挑戦してきました。しかしその中には大々的なマーケティングの末に廃業したり、全く別業態へと事業転換したりする会社もあり、当時のマーケットは黎明期以前の段階にありました。

創業当初、みらいマルシェの営業をしていると、「昔も似たような〇〇ってあったでしょう?ちょっと使ってみたけど、なんだかよく分からないうちに潰れちゃったよね。そんな感じになるんじゃないの?」という声をよくいただいていました。期待値ゼロどころか、マイナスからのスタートです。それだけこの手のサービスにはがっかりさせられてきたんだなと、寂しい気持ちになったのを覚えています。

そんな状態からスタートして、少しずつお客様が増えていくうちに、有り難いことに、「今ではもう、みらいマルシェがないと仕事が回らないよ」というお声をいただくようになってきました。それはもう全ての疲れが吹き飛ぶような喜びを感じる瞬間です。

そういった経験を重ねるにつれて、共同創業した土屋とよく「価値を感じていただけるお客様が一人でもいる限り、何があっても事業撤退せず、続けていこう」と話すようになり、みらいマルシェの重要な価値判断基準の一つになっていきました。

投資家や従業員がいることで判断が変わる

ビジネスの世界では、撤退しないという考え方はアンチパターンで、とても褒められたことではありません。マーケットにフィットせず、投資に見合うリターンが得られず、従業員を養えず、傷口が広がっていく。そんな状態を目の前にしながら「まだ必要としているお客様がいるから…」といって事業を継続することは普通は許されません。

もし投資家の貴重な資産や、従業員の貴重な時間を預かっていたら、間違いなく撤退に対する判断が変わってきます。撤退だけでなく、重要な意思決定には必ず投資家と従業員のことが頭をよぎります。みらいマルシェは、そのときブレずに顧客と社会だけを向いた意思決定ができるように、特に初期のステージでは出資を受けない・採用を行わないという選択をしました。

負けたときのことを考えてレバレッジをかけられないというのは経営者として情けない話ですが、みらいマルシェにとっての負けは「顧客と社会を向いて働けなくなること」であり、もっと言うとそのコントロールを失うことであると考えました。

小さいことを戦略上の強みへ

そうと決まれば、投資家や従業員がいないことを会社の強みに変えないといけません。投資家がいないということは利益や成長速度を追求しなくていいということであり、従業員がいないということは人件費やオフィスなどの固定費がなく戦えるということです。

元々、生鮮品の流通を取り巻く商環境は閉鎖的で、かつ人手不足のため日々の業務に新しいことを持ち込むハードルも高く、広告や人海戦術で急変革を期待できるようなマーケットではありません。また、薄利多売の世界でもあり、新参者がそこに高い利益率で参入していけるような居場所でもありません。

そこで、みらいマルシェは戦略の一つとして「薄利の追求」を掲げ、取引手数料4%という業界最安値の料金設定をし、その上で早い段階から黒字転換を実現することで、緩やかな市場浸透速度でもこの料金を維持できるようにしました。一般的な生鮮ECで15〜25%、業務用の受発注プラットフォームで10〜20%、従来の市場流通で5〜10%という取引手数料が相場なので、4%という数字はお客様にもとても驚かれます。

お陰様で創業2期目から会社は黒字となり、小さいながらも、長い目線で顧客と社会のための事業づくりに専念できるようになりました。

これから組織拡大のフェーズへ

創業6年目に突入し、今となっては撤退や事業転換の心配はほとんどしていません。それどころか、これからますますマーケットに広く浸透していくこと、そしてその速度もますます上がっていくことを確信しています。それと同時に、あちこちで業務がパンクしつつあり、いまみらいマルシェは目に見えて組織拡大を迫られています。

実現したいのは「人手の確保」ではなく「強いチームづくり」

業務のパンクを人手の「数」で解決しようとしていては、組織は肥大化し、成長速度が鈍り、業界の足枷となってしまいます。人手不足が叫ばれるこれからの時代には尚更です。みらいマルシェが大事にしていきたいのは、業務のパンクを解消する「仕組み」であり、その仕組みを継続してつくっていける「小さくても強いチーム」です。

そのためみらいマルシェでは、採用活動に先立って、強いチームをつくるための人事制度を整えることから始めました。詳細はここでは触れませんが、実現したいことを素直に制度化していった結果、かなり尖った人事制度ができあがったと思います。制度の内容に興味のある方はぜひ下記の会社紹介資料を見ていただけると嬉しいです。

みらいマルシェ 会社紹介

speakerdeck.com

これから運用していく段階なので現時点では絵に描いた餅ですが、今後運用してみてどうだったかもレポートしていきたいと思います。

強みを磨き、社会に還元するループをつくる

そして今後事業規模が拡大するにつれ、現在4%の取引手数料を最終的に1%程度まで下げていくことを計画しています。これは投資家の資本を預かっていたら採りにくい選択かもしれません。

現在2人でGMV(年間取扱金額)20億円。安直ですが、今後ざっくりGMV50億円を4人のチームで実現することを目指してみたいと考えています。実現後、手数料を4%から3.5%へ。その次は6人で100億円、そして手数料を3%へ…。

みらいマルシェは「非日常を楽しむための食材提供のしくみ」ではなく、 「毎日の食をより豊かにするためのインフラ」 であることを目指しているため、手数料が1%でも安くなるということは、つくる人と食べる人の日々の生活の中に最大限メリットを提供できるということにも繋がります。

実際にはそう簡単にいかないことは百も承知ですが、生産性を高めながら、会社の利益率を向上させつつ、社員の報酬も徐々に上がり、手数料も徐々に下げていく、そんなループが作れたら最高だなと思っています。

おわりに 〜 AI、少子化、Well-beingの時代をどう生きるか

人手不足が加速するこれからの時代、大きな組織で事業拡大にレバレッジを効かせようという考え方が最適ではない場面も増えてくるのではないでしょうか。

また個人の視点では、AIが個人に取って替わる時代を目前に、人間が本当にやりたいこと、やるべきことに専念して働くことが重要になってきました。「働きやすさ」は十分に整ってきました。これからは改めて「働きがい」に目を向け、自分の価値観や使命感を持って働くことが求められる時代になっていくのではないでしょうか。

令和を生きる新しいスタートアップのあり方として、「急成長」を大前提とせず、マーケットにとって適切な成長速度で「持続的な価値提供」を続け、チーム全員がしっかりと自分の手綱を握って社会と向き合うような 小さくても強いチーム をつくることが、結果として社会的価値の最大化に繋がるかもしれません。

みらいマルシェは、これから組織を緩やかに拡大させていく上で、事業拡大を加速させていくことはもちろん、そんな強いチームをつくることができれば、それが私たちらしい一番の成長だと考えています。


みらいマルシェは、一緒に事業を拡大していくメンバーを現在1-2名募集中です。 興味のある方は、ぜひ一度コンタクトいただけると嬉しいです。

採用情報 | みらいマルシェ株式会社

about.miraimarche.com